妖精と彼女【完】








トウは珍しく本やマンガの類を持ってきてなくて、手持ちぶさたな様子でヒマそうにしている。
心配そうな顔をしているのに、声がなぜかちょっと嬉しそう……。




人が苦しんでる時に……!
あたしは、イラっとした。







「見て……わかんないの…?」






精一杯、かすれた声で冷たく返事をするけど、やっぱりトウは冷たくされても気にしない。






「悠ちゃん、熱あるの?大丈夫なの?」







ちなみにあたしは、おでこに冷えピタを張っている。
明らかに熱がある人の装いでしかない。






……見れば分かるだろうが!!

という言葉は、もう声にすることすら出来なかった。








あたしが唯一できたことは、


「………空気読んで帰れ。」






という、9文字を言葉にすることだけだった。








それでもトウは帰るそぶりを見せず、ベッドの横に座り込んであたしの顔を眺め続ける。





ボンヤリとその姿を見ていると、その顔はうっすらと微笑んでいるみたい。



その微笑みは、楽しそうといったものではなくて、慈愛を含んだものなのが気になった。