妖精と彼女【完】





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彼が恋心を抱いた相手は、決して、許されない相手だった。
神と人間、妖精と人間。






それは、触れ合える関係ではない。
触れ合えば、人間は負傷したり意識を失ったり。
最悪、死に至る。




ゆえに、神や妖精は人間との触れ合いを禁じられている。








悠の右手が赤く腫れているのも、あの時トウが悠の腕を無心で掴んでしまったからだった。




そして、悠は意識を失い、現実世界では昏睡している。











初めて出会った時に彼は温泉の妖精と名乗ったが、彼はそうではなかった。


本当の彼は、温泉の神。








一つの温泉に肩入れをしてはいけない。
一つの地に居着いてはいけない。
全ての温泉を豊かにし、枯れたりすることのないようにするのが彼の務め。







あの日、彼が彼女を見つけたのは偶然だった。






温泉がとても好きな人間がいれば、彼には分かる。
彼女も、そうやって見つけた存在だった。






彼女は実家の天然温泉銭湯を愛し、大切に毎日清掃していた。







最初は好奇心だった。

彼は、温泉好きな彼女と話してみたいと思った。





神だなんて名乗ったら不審者だと思われると思って、精一杯捻りをきかせたつもりで妖精だと名乗った。





彼女と話してみたら、見た目がキレイだとかそういうことじゃなく惹かれた。







彼女の心に、彼は惹かれた。
初めて誰かに、恋をした。