妖精と彼女【完】











そしてそれを誤魔化すように、トウの都合はお構いなしにあたしは勝手に話を進めた。






「あー、でも!あたし今忙しいから。…夏休みになったらね。」







あたしの都合で少し先の時期を指定しても、トウは嬉しそうに何度も何度も激しく首を縦に振るだけだった。






「うん!うん!あと2ヶ月くらいでしょ、全然平気だよ」






そう話すトウはとても嬉しそうで。
内心、勝手に時期を指定したことで反論されるのではと心配していたあたしは少しホッとした。






「俺、悠ちゃんと行きたいところ探しとくね!悠ちゃんも何かあったら教えてよ!」






「う、うん…っていうかテンション高すぎでしょ……」






あまりの喜びように、少し呆れるあたしを前にトウは変わらず、とても嬉しそうにニコニコしている。






「だって嬉しいもん〜!あー夏が来るのが楽しみ!じゃ、今日は満足したから帰るね!お休み、悠ちゃん!」





「……お休み。」








すっかり上機嫌になったトウはマンガを手に取り、あっさりとベランダのドアに手をかけた。
普段は愛から追い出されるまで居座ることもあるのに、今日は本当にあっさりしている。





一人になった部屋は静まり返り、あたしのドキドキする心音だけが聞こえる。







……なんだかんだ、あたしも楽しみにしてるっぽいな…。




パソコンのディスプレイに視線を移しても、何も頭に入ってこない。




ドキドキ、ドキドキ。
この焦りに似た気持ちは、何なんだろう?







「…夏休みかぁ……。」





もうすぐ梅雨がきて。
梅雨が明けたら夏がくる。









夏が、待ち遠しい。