妖精と彼女【完】







「はい。予約していた倉本です。」






「はっ?予約?」






「お待ちしておりました、倉本さま。…どうぞこちらへ。」






無表情同士で会話が行われ、あたしの疑問は無視されたまま、無駄のない動きで店員さんはテーブル席へと誘導しようと歩き出した。


あたしは、店員さんの後ろ姿を見ながら愛にそっと声をかけた。







「ちょっ…愛、予約してたの!?」






「うん、まぁ。」






アッサリとした返事をした後、愛はテーブル案内をする店員さんの後をついていった。
あたしは何が何だか分からないまま、愛に続いた。









用意されたテーブルへと案内され、見た目以上にフワフワしていて沈み込むイスに座った。





店内は落ち着いた音色のジャズが流れている。
開店したばかりみたいでまだお客さんは少ないけれど、キレイな色のお酒を飲んでいるお客さんがいる。







さっきの無表情の店員さんがお冷を持ってきた。
ネームプレートを見ると「マツハシ」と書いている。


整った顔立ちだなぁ、と思って見ていたものの、あたしの視線に気付いても微笑みらしきものは全くない。




大人が行く店の店員さんって、こんなもんなのかな…?







…………それよりも、愛は何故こんな店を知ってるんだろう。
良からぬ友人に影響でも受けたのかと一瞬不安になった。







「ねぇ愛、……この店って」