アタシと沙織の後ろに永原真央がいる。


「アタシ等と居ると、クラスの奴に避けられるぞ」
「仲良くなりたいだけだから」

それを繰り返していると、
沙織がやっと口を開いた。


「奈々には気をつけて」
「え・・・あー!門倉奈々ちゃん?」


アタシは永原真央を見ようと
振り返ったら、鳥肌がたった。


「どーもー、門倉奈々ですっ」


沙織は固まった。


「沙織、亜紀・・・屋上行こう」


永原真央は教室に行き、
3人で屋上に行った。


「奈々には気をつけて・・・どういう意味かな、沙織」
「あれは、奈々の嫌いなタイプだから・・・近づかないように・・・」
「貴女も奈々に殺されるよ、危ないよー。そういう意味だろっ!?」


奈々は怒り狂っている。
沙織は震えている。


「奈々」


いつもより力強く、名前を呼んだ。


「なんだよ、亜紀」
「そろそろ・・・教えてよ。奈々が壊れた理由と、あいつが死んだ理由」
「昨日の話、信じてないんだ」
「・・・奈々が第一発見者なんだから」


奈々は鼻で笑うと、柵に寄りかかった。


「あいつ・・・由美はさ、陰で奈々達をバカにしてた。これは事実だよ、亜紀」
「・・・信じるよ」
「だから、奈々は由美をいじめた。クラスの奴に、こいつは悪い奴だって分からせたかった。だけど、由美はクラスの人気者だったから・・・皆は由美の味方してた」
「アタシと沙織の知らないとこで・・・」


アタシは言葉が出なかった。
奈々と由美はクラスが同じで、
アタシと沙織は、朝と放課後に
会って話すくらいだった。

だから、異変に気付けなかった。


「ある日、由美に屋上に呼び出された。大事な話があるって」
「大事な話?」


沙織が問いかけると、
奈々の肩が震えだした。


「由美の親は、奈々を里子にした親。親から聞いたんだって」
「奈々と由美は実の・・・姉妹?」
「違う。奈々は・・・道端に捨てられていて、それを由美の親が拾った。でも、実の子供の世話で精一杯で、奈々を里子にした」


言葉が出なかった。
実の親と、親になろうとした人に捨てられた。
奈々は二度も捨てられたんだ。


「由美の親には会ったこと無かったし・・・衝撃的だった。由美は、奈々は不幸者だねって・・・笑顔で言ったんだ」
「由美がそんな人だったなんて」
「それで、奈々はどうした?」
「由美を屋上の端まで押した。・・・選択させたんだよ。友達辞めるか、死ぬかどっちかにしろって」


アタシは、目をつむった。
奈々の口からありえない話ばかりが
飛び出してきて、頭が混乱した。


「そしたら、じゃあ死ぬって言った。奈々達をバカにしてたくせに、友達辞めたくないって選択したんだ。飛び降りる間際に、クラスの奴は嫌いだけど奈々達は大好きだった・・・そう言って由美は自殺した」
「バカにしてたのは・・・由美じゃなくて、クラスの奴?」
「それって、由美はクラスの人に脅されてたのかな。私達に親がいない理由を教えろって」


沈黙が続いた。
奈々が壊れた原因が分かった気がする。
二度捨てられた上に・・・今度は、
誤解したまま、友達を死なせた。


「だから言ったろ?由美は・・・自分で死を選んだって」


アタシ達の過去は、
残酷なものだらけだ。

綺麗な思い出はほとんど無い。