「あいつはさ・・・奈々は里子だって事。亜紀の親が居ない事、沙織の親が自殺した事、クラスの一部の奴に全部話してた」


奈々の目は、少し悲しげだった。


「クラスの奴に言われたんだよ・・・親無し3人組の中に、あいつが居るのはおかしいって」
「だから・・・あいつを省いたのか」
「あいつはさ、陰で奈々達をバカにしてた」
「奈々、やっと話してくれたか」


心の闇が少し晴れたと思ったら、
奈々の口角が上がった。


「亜紀は・・・奈々の話信じる?」
「どういう意味だよ」
「信じるのか、信じないのかは、亜紀次第だけどねー」


演技でもしてたのかってくらい、
奈々は急に明るいトーンになった。
でも、その喋り方が中学の奈々そのもので
懐かしい気がした。


「亜紀・・・」


奈々の目からは涙が溢れていた。


「何?」
「あいつ殺したのは、奈々じゃない」
「・・・」


アタシ達は、あいつが死んでから
性格も何もかもが狂った。

一番、狂っていて・・・
本音が分からないのは、門倉奈々だ。


また朝が来た。


「おはよー!!」


学校の昇降口で靴を履き替えていると、
背後から永原真央の声が聞こえた。


「真里から聞いたよ。昨日はありがとう」
「うん」
「そだ、真里がまた会いたいって」
「・・・借金取り、大丈夫なの?」
「月に一回しか来ないから・・・我慢すれば大丈夫だからさ。少しずつ返金してるし」
「たまに、妹に顔見せに行くよ」


永原真央は驚いている。


「アタシさ、中学の時・・・ダチ守れなかったからさ。償いじゃないけど、放っといたらバチ当たりかな、みたいな」
「何か、仲良くなれた感じかなっ?」


驚きの表情から笑顔に早変わりし、
握手を勝手に済ませた。


「亜紀、何してるの?」
「沙織」
「あ・・・永原真央」
「どうして、ウチの名前を?」


沙織が永原真央と初対面した。
それは良いけど、奈々が来ないように祈った。
今朝、家中を探したけどもう居なかった。


「亜紀ちゃんの友達?じゃあ、仲良くしようね!えーと、沙織ちゃん?」


これから悪いことが起きるのか、
嫌な予感がした。