家に帰って、真里と一緒に
昼ご飯を食べた。


「亜紀ねーちゃんのママとパパは?」
「真里と同じだよ」
「居ないの・・・?」


真里はコロッケを食べていた箸を置き、
小さなリュックから写真を取り出した。


「真里のママとパパ。・・・これしか無いの」
「・・・」


永原と真里が両親と写っている
写真を眺めていると携帯電話が鳴った。


「もしもし、永原・・・誰?」


それは、永原真央がバイト先で
倒れた事を知らせる電話だった。
アタシの携帯にかけてきたのは、
アドレス帳から適当にかけてきたらしい。


「真里、ちょっと病院行ってくる。・・・戸締まりしてくから待ってな」


最低限の飲み物と食べ物を
真里に残してアタシは病院に向かった。


「すいません、永原真央が運ばれたらしいんすけど・・・どこですか?」


受付の人が看護師を呼び、
その看護師に案内された。


「この病室よ。今日倒れたのは、過労とストレスが原因で・・・病気とは関係無いわ」
「そうですか」


アタシは永原の病室に入った。
そこには、バイト先の店長と名乗る人が
永原の寝るベットの横に居た。


「真央ちゃんの友達ですか?」
「そんな感じです。・・・まだ起きないんすか」
「さっき、点滴をして眠ったとこです。真央ちゃんは働き者でね・・・親御さんも居ないし、頑張りすぎたのかな」


永原の目がゆっくり開いた。


「・・・亜紀ちゃん?」
「俺が電話したんだ。真央ちゃん、体の事もあるし・・・しばらくバイトは休みな」
「だめです!私が働かなきゃ真里はどうなるんですか?真里には・・・私しか居ないんです」
「真央ちゃん。容態が悪化したら、それこそ妹は1人になってしまうんだ」


アタシは2人のやりとりを
静かに見ていた。


「病気を治すより、真里をちゃんと学校に通わせてあげたいんです。病気を治すのは遠回りしても構わないんです」
「・・・店があるから帰るな。せめて1ヶ月は休みなさい。その間の生活費は店の金を送るから」
「店長・・・ありがとうございます」


店長は帰った。
永原は俯いたままだ。


「あのさ、倒れるまで働くなんてバカだな」
「ウチは・・・真里に不自由させたくないから」
「・・・真里の気持ちは考えた事あるか?」


ベットの隣にある椅子に座った。


「真里はさ・・・毎日、永原が帰ってくるのをずっと待ってる。自分が待ってる人が・・・ある日突然帰って来なくなったら、悲しいだろ?」
「・・・」
「アタシは、そうなったから。だからさ・・・ちゃんと真里の元に帰ってほしい。だから、無理はすんなよ」
「涙・・・出てるよ」


自分の頬を触ると、
頬が涙で濡れていた。