「こーんな、あんたと同じような細めのつり目で、こーんな細長い顔した、ソックリな子どもだったじゃないのさ!」

間違いなく、おまえの遺伝子だろ!

「おまえマジそれ言い過ぎっだってぇのぉ!聞け聞け!聞けって!聞きなさいっ!…」

「ママだの!なんだの!言ってたじゃんよぉ!キモチ悪くて…オエェェッ!!」

とっさに強く抱き締められた。

「こらぁ、それ以上言ったら俺怒るぞ?」

「…だって、嫌いだもん」

輝は私の背中を柔らかく何度も叩いて、落ち着かせる。

「…離婚した妹と、妹の子どもだよ?妹も俺と同じ顔してるから…早く言えば良かったな、悪かった。それも俺の足りなかった所だな…」

「うそっ…?本当に?…」

輝の顔を見て疑う。

「本当だよ。…最初は浮気から始まってな、暴力とギャンブル、借金まで妹の亭主はこさえやがって、離婚届突き付けて実家に逃げたはいいが、今度はストーカー行為。それで、おまえと一緒で一つの所に留まれなくなって、車で銭湯、外食。俺も心配だから、それに付き合ってやってたのぉ」

「そう…だったんだ…」

「状況は違っても、結婚したって家に居られないで苦しんでる人間もいる。色々な人生を歩んでる人間もいる。としこももう少し、分かってやってよ。…なぁっ?」

「…はい…」

妹だったんだ、なら良かった。

だったら、もうどうでもいいや。

輝の妹の素性の事なんて、私からしたら所詮他人の事だから、私が気にする必要ないもんね。

「輝は、私だけの輝で間違いないよね?…」

「あったり前だボケッ」

…チュッ…

「結婚がそんないいもんじゃないってのも、俺も分かってる…でも、としこ?俺は今ねぇ、無性におまえと一緒に暮らしたくて仕方ないんだ…」

「はぁっ?!」

「ぶっちゃけると、としこと居ると楽しからさぁ…不安にもなるけど、やっぱり楽しいってのが、笑いが有るってのが、俺にとって一番大きいんだよね…」

輝ってば、急に真面目に語り出すからビックリ。

「そう…」

でも、まさか言わないよね?

輝まで、『結婚したい』だとか言わないよね?

この結婚したくない、私に。

「俺が養うからさぁ…」

嫌だ!

私は、

「ご、ごめん。今夜は泊まれない…」

服を寄せて、私は素早く着替えた。

「調子悪くなったから、帰るわ。ごめんねぇ(笑)」

「おいっ…としこ?…」

もし、万が一あの言葉の後に、『結婚したい』だなんて言われたら。

…私は、もう彼とは恋人では居られない。

すなわち、愛していても、結婚するくらいなら別れる。