もう輝の事では、私は充分に傷付ついたし、コイツが人に八つ当たりする性格なんだって事もよく分かった。

ここは、思い切って聞いてやろう。

輝はさっき、間違いなく私を愛してるって言ってくれたもの。

輝には、きちんと離婚の手続きをしてもらって、きっぱりと家族を捨てて貰おう!

で、もう2度と会わないで!って。

約束して貰わなきゃ!

「輝ぁん…好きだよぉん…」

「なぁんだよ、また猫みたいに」

「ねぇん…よしよし…してぇん?」

ニャアーッ!…ニャアニャアーッ!

猫になって甘えまくる。

絶対に離婚して貰うんだから!

「よしよし…よしよし…としこぉ?」

頭を撫でながら、

…チュッ…チューッ…

オデコにキス。

「可愛いじゃねぇか」

「違う!」

「えっ?!」

「アホだなぁ、おまえ…って言ってよ!」

私はワガママに手足をバタバタさせて要求した。

「輝のいつもの甘~いセクシーボイスでリクエスト、カモーン?プリーズ?」

「…ぜってぇ、意味分かんねぇコイツ」

輝は照れ臭さそうに苦笑いして、耳元で囁いてくれた。

「アホだなぁ、おまえ…でも、愛してるよぉ…としこ?」

そして私の耳元に口唇でなぞらせて、

…チュッ…チュッ…

と、軽くキスをする。

「ねぇ、じゃあ、愛してるなら約束して?…早く奥さんと離婚して、子ども捨ててよ?」

まさかまさかの、私がこんなセリフを淡々と吐く出会いが待っていたとは。

永田 輝…、あんたは罪な男だよ。

「おい、ちょっと待て…」

「言い訳は許さない。二重生活なんてもう止めて?今更、よりを戻したいだなんて言われたら絶対無視して?お願い…」

輝はムクッと起き上がり慌てる。

「おまえ、何を言ってんのぉ?」

「子持ちの主婦は、もともと嫌いだって言ってるでしょ?私は輝の奥さんや子どもにウロチョロされたくないの。嫉妬したくないもん。それに私の方が絶対輝を幸せにできるよ?」

ヨッシャー!決まった。

困って輝は、頭を抱える。

「子どもを産んだ女は、もう旦那なんてお払い箱。大切なのは子どもになってる。旦那はただの金ヅルなだけ。そんな輝、可哀想…。私だったら輝だけを大切に思えるよ?」

「だから、それ言い過ぎっ」

輝は私の口をまた指で塞いだ。

「ちなみに俺、今だかつて1度も結婚した事ないし。子どもだって、はらませた事ないんだけど?…おまえ、相当勘違いブッこいてる」

………へっ?!

「だって、あんたいつも銭湯やらで黒塗りの軽自動車で、奥さんと子どもと会ってるじゃない!」

「違う違う。違うから、落ち着けって…落ち着きなさいってのぉ」

輝は私を慌ててなだめる。