もう、嫌われてもいい…。

世間から、輝からも嫌われてもいい…。

私はあの、店員さんの心の中の本音を、どうしても尊重してあげたいから。

輝、ごめんね。

私、本当はこういう女なの。

嫌いになるなら、今だよ。

冷めた目で見ていいから。

だって、我慢できないもの…。

自分は悪くないのに謝って、見下されたり、他人の為に犠牲になって損したり…。

確かに目の前で、犠牲になってるのは私じゃない。

自分もその立場だったら、きっとあぁするよ。

でも、腹の中は違うもの!

それを、あの腐れた子持ちの主婦たちに悟らせてやりたいの!

もう嫌いになって!輝!

やっぱりもう、私は独りでしか生きられないんだから!

「本当に迷惑!うるさくて邪魔臭くて、無神経で大ッ嫌い!子持ちの主婦大ッ嫌い!!」

私の言葉に反応した周りの人間たちは、その集団を厄介そうに見つめていた。

そしてその冷たく刺す視線で、主婦たちは気が付き、やっと静かになった。

結局みんな、うるさいって思ってたんだ…。

でも、主婦たちは群れの強さを見せつけるように、コソコソと私に憎まれ口を叩きつけていた。

「殺人も、そりゃあ起きるわ!あんな集まりに居たら!」

私は、それでも言ってやった。

私の言葉の後に、黙っていた輝がようやく動き出した。

輝は席を立って、私の座る長椅子に移動して、隣に座った。

そして、その集団にキツーイ目付きで睨み付けた。

「…もう、いいよ。としこ…」

私の硬くなった心を緩ませるように呟いた。

「なんだ、おまえも自分の思った事、きちんと言えるじゃん?…」

「えっ?」

頭を撫でられた。

「よしよし…としこ…」

思ってもいない言葉に、フワッとした。

「だってね、私っ…」

キレた理由を言おうとしたら、輝は私の口を軽く指先で塞いだ。

「いい…言わなくも…」

「輝…」

「時には言い過ぎなきゃ、伝わらない事も有る。…よしよし…としこ」

輝の言葉。

本当に重くて深いよ。

それでいて、強くて広くて。

やっぱり、優しくて温かい…。

「輝っ…輝っ…ごめんね、ごめんなさい。みっともない姿見せて、恥ずかしい思いさせてごめんなさい!ごめんなさい!…好きだよ…だから嫌いにならないで…」

涙が一気に流れた。

「嫌いになる訳ねぇだろ…泣き虫だなぁ、としこはぁ…よしよし…」

意地悪して、イヤミもあったの。

輝に対しても。

だから…ごめんなさい。

その夜、私は輝の部屋で泊まった。

でもね、輝。

私、本当に子持ちの若い主婦は大嫌いなの。

うるさい子どもも大嫌いなの。

嫌なモノは、どうしても嫌なの。