クリスマス。

その日がやって来た。

本当に今夜、家に来るのかなぁ。

仕事中は、ずっといつもと変わらず、ほとんど話はしなかった。

私は仕事が終わって、クリスマスケーキを買ってみた。

永田さんが帰って来た物音を確認して、私は鍋の用意をする。

シャワーを浴びてる音に合わせて、材料を鍋に入れる。

何時に来るのかも分からないけど。

何となく、下から響く物音だけの感覚で私は準備をしていた。

ガタッと扉をしめて、鍵を掛ける音。

私は慌てて、火を止めて、鏡で自分を確認。

カタン…カタン…カタン…

階段を上がってくる音。

トイレ清掃で喧嘩を売られた事すらも、もうとっくにどうでもよくなっていた。

大丈夫だよね。

今の私、大丈夫だよね。

部屋も掃除しまくったし。

指摘されそうな物は全部隠したし…。

部屋を見渡し、指差し確認を何度もする。

盛り上がり次いでで、テレビを付けておく。

ピンポーン…

文句付けに来る時は、3回もインターホン押すくせに。

今夜は、たったの1回。

使い分けてるところが、なんとも可愛い奴だ。

「はい…」

玄関を開けると、いつもの地味な色のない格好をした、永田さんが立っていた。

「鍋、食いに来た」

見下して睨むの止めなさいっての!

「お疲れ様でした」

ペコッと頭を下げて、

「一応は気合い入れて掃除したから、キレイになってるとは思うんだけどね。…入って入って♪」

私は永田さんを招き入れて、玄関を閉めた。

「あぁそう。じゃあ、どの程度の部屋ん中か、見させてもらおうか。…お邪魔します」

いやらしい言い方すんなぁ、コイツ。

でも、私もいい加減に、この言い回しに慣れなきゃ。

そうじゃなきゃ、自分のモノにはならない。

永田さんのモノにも、してもらえない。

「ねぇ、鍋さぁ、ちゃんこ鍋にしちゃったんだけど、平気?」

「ちゃんこ鍋?…あぁ、相撲部屋でちゃんこ鍋って?…それなら構わねぇだろ」

「あぁっ?!(怒)」

どういう意味?!

遠回しで、私がデブッてるって言いたい訳?!

「もう腹ペコなんだ、早く食べさせろ」

永田さんはコタツの中に入って、暖まる。

オヤジ臭いなぁ。

私より若いんだし、カッコイイんだから、その老けたような行動は慎みたまえ。

「えっ、そうなの?たくさん鍋ん中にブチ込んだからさ。いっぱい食べてね」

「おう…」

火を付けて、もう1度鍋を温めた。

………。

永田さんは立ち上がり、側に突然来るから振り返る。

「何?」

「俺が、持ってくわ…」

また急に優しく、手伝ってくれちゃって。

そういう所でまた、惹かれてしまう。