あなたの心理テスト(ホラー)

 「生徒がトイレで亡くなっているって、本当ですか!?」


 噂を聞きつけたようで、隣のクラスで授業中だった武田雷幸(たけだ らいこう)


が駆けつけた。


 名前は男らしいが、正真正銘の女性だ。


長い髪を1束にまとめたポニーテールが揺れている。


いかにも頭の良さそうな顔立ちで、言葉遣いも丁寧。


きっと育ちがよく、親がまともなのだろう。


 年がら年中黒いスーツを着こなすため、別名『スーツの申し子』。


尊敬を込めて呼ぶ人もいれば、あまりよく思わずに、貶して呼ぶ人もいる。


圧倒的に多いのは前者。


 それもそのはず。雷幸のクラスに入れば成績が上がると評判だからだ。


 だからクラス替えは一大事。皆願掛けをする。


 もちろん、雷幸の教え方が特別良いわけでもなければ、


ほかの先生がだめだということでもない。


 たまたま何年か前に卒業した生徒が一流高校に行って、


その人は高校生活をすべて雷幸のクラスですごしていたからだ。


そこから雷幸のクラス伝説が始まったわけである。


 ちなみに、担当教科は国語。


わかりやすく、特に古文が評判だ。


 「あ、はい…そのよう、です」


雷幸の独特な雰囲気に圧倒され、先生もあわて気味。


雷幸の厳しいイメージがそうさせるのかもしれない。


「ごほん」


 すると、わざとらしい咳払いが聞こえた。


「まったく。情けないですね。生徒の一塊も落ち着けさせられないとは」


 校長がやってきた。


漫画に出てきそうなバーコードハゲの代表である。


「わが学校の評判が下がったらどうするんです?


 もし自殺だったら、来校者もがくんと減ってしまうではないですか!」


―――――自分の利益しか考えていないじゃないか。


 努は不快感を覚えた。


何でこんな奴が校長になったんだとつくづく思わされるのであった。