あなたの心理テスト(ホラー)

 「ちょ、先生。何にやけてんの?キモ~!」


 すっかりいつもの調子を取り戻した正が先生に向かって言う。


 努は正がトイレに行ったと思い込んでいたため、少々驚いた。


死体があるなんていうニュース、正が興味を持たないわけがない。


しかし、消えた10人の中に正は属していないのだった。


 いつもは厳しく注意する先生も今回は見逃すようで、


「……」


何も言わない。


 正もいつもなら調子に乗るところだが、反応がつまらなかったのか、


それ以上は何も言わなかった。


 一方、努はどうしていいのかわからない。


当然授業を受ける雰囲気でもないし、先生も硬直して動かない。


早く警察に知らせるべきではないのか?と、努は疑問を抱いていた。


 しかし努もそうは思ったものの、体が動かない。


金縛りか?いや違う。ショックで動かないだけである。


こんなにも人の死が人にショックを与えるものかと案外努は冷静だ。


心は冷静でも、体は正直なもので、全く動かない。


 指1つ動かないわけではないが、


体がついている意味がないと思うほど、努の体は動かない。


―――――隣のクラスにはもう伝わっただろうか?


   …いや、伝わるかどうかと思った俺が馬鹿だ。


 明日のニュースに出るだろうと努は思った。


 それにしても、先生はおもしろいほど動かない。


 先ほどから全く喋らない海斗の仲間である蘭とヨシは、


まさか…と言う声が聞こえてきそうな顔をして着席したまま。


―――――トイレで死んでいる人…それは海斗じゃ?


 蘭とヨシのうまく機能しない脳にはそればかりが漂っていた。


いやまさか、とも思ったが、100%の否定はできない。


その死体が海斗でないことだけを祈って、2人は静かにいすに座っている。


 努はその結果を、知っているわけだが。