あなたの心理テスト(ホラー)

 がらっ。


 教室の扉を勢いよくあけると、クラスメイトの視線が努に注がれる。


 そして次の瞬間。


女子からはキャーッという悲鳴、男子からは驚きと戸惑いの声が上がった。


何を驚いているのかと思えば、皆努のズボンを指さしている。


 努は自分のズボンに目をやった。


 これでもかというほど赤に染まり、教室にトイレと同じ臭いが広がる。


あの、生臭い臭い。


 教室から出ていこうとするが、地理の先生が座るように指示する。


 そして、努に話しかける。


どうしてそんなに血まみれなのか、この臭いはどこでつけたか、


努はいろいろ訊かれたが、すべて正直に話した。


 そのせいで教室は余計騒がしくなり、せっかく皆座ったのに、また立って騒ぎ出す。


 中には努の話を聞いており、トイレに行ってみようなどと言う者もいれば、


死体がいると聞いて泣き出すクラスメイトもいた。


先生も少々戸惑った様子。


 もう号令をかける人もいなければ、静かにしようと思う人間もいない。


教室の中から1人、また1人と廊下へ出て行く。


 引き留めようとする委員長も、焦りながらも座れと言い続ける先生も、


トイレに行って確かめてみたいと思っているに違いない。


それは海斗の、いや死体の心配などではなく、ただの興味本位。


一枚皮をはげば皆同じ人間。


1人興味が湧いているのなら、皆湧いていると思っていいだろう。


努はそれどころではなかったが。


 努はもうさっきの臭いと出来事で頭の中がかき乱されていた。


どんな簡単な計算でも、今は解ける気がしない。


 気がつけば教室の中からは10人ほどのクラスメイトが消えている。


先生も残った生徒の目があるため、動くに動けない。


興味本位だと思われるような行動をとってしまっては権限も何もないからだ。


 しかし、生徒の安否を確認するためには行かなければいけない。


だが行こうとするとどうしても先生の口角は勝手に上がっていくのだった。