「ヨシ、俺もくるみのことさ、好きだったんだ」


「え…?」


 努は立ち上がりながら、自分の気持ちをヨシに伝えた。


努自身は自分がはくるみが好きなことをかなり多くの人が知っていると思ったが、


ヨシは新鮮な反応を見せた。


ということは、知らなかったようだ。


「ははっ。知らなかったんだな。聞こえないならもう1回言ってやろうか?」


「いや……聞こえたよ。努もくるみのこと…そうか」


 泣きながら話す2人を見下す空には雲1つ無い。


2人の心とは正反対だ。


「だから、俺も辛いんだ。ヨシばっか泣いてんじゃねえよ…」


 努は笑って見せた。しかしヨシには、


「馬鹿野郎。努、無理して笑ってんじゃねえよ。バレバレだぞ」


通じない。


「べ、別に無理して笑ってねえよ!!」


「涙出てるじゃん」


 ヨシは努を指さして笑った。


「ヨシこそ!!」


 ヨシの目にも涙が浮かんではポトリと落ちた。


「う、うるせえよ」


 ヨシは掌で涙をぬぐい、何でもないというようだ。


 とにかく、無理して泣くんじゃねえとヨシが努に向かって言った途端、


「……っ」


 努は静かにまた泣き出した。


「……努、一緒に、叫ぼうぜ」


「何をだよ……くそっ」


 お互い泣きながら話す。


「くるみ、好きだった、って、言、うに決まってんだ、ろ!!」


「馬鹿か…!スベる、に決まってんだ、ろ。寒いぞ」


 そして、ヨシは努に対して夏なのに何言ってるんだと言った。


「どうせ、誰も聞いちゃ、い、ねえよバカヤロー」


「ヨシはそれで、いいかも、知んねえがよぉ…」


「だああ、もういい!俺は叫ぶがら゛な゛」


 もう何を言っているのかもわからないヨシの声で努は余計に泣けてくる。


「知るかよ…バーカ」


 もごもごしている努を差し置いて、ヨシは大きく息を吸い込んだ。


あたり一面にある7月の風を、くるみのいる空を見上げて、


くるみのいた学校を踏みしめて、吸い込んだ。