「なあ、努。お前は本当に度胸があるよな。くさ…おっと、正にああ言うなんて」


と、喋りかけながら努の肩に手をかけてくるのは、


親友の村野嘉彦(むらの よしひこ)。


皆からヨシと呼ばれ、男女ともに人気がある。


以外に、不良にも人気というのが納得のいかないところだが。


 そしてヨシをあまりよく思っていないホラ吹き男、安藤海斗(あんどう かいと)。


お世辞にもイケメンとはいえないが、不細工でもない。


顔だけ見ればどこにでもいそうな奴だ。


海斗の嘘はすごい。友達付き合いの長い努さえ、嘘か本当か見抜けない。


「そうなんだよ。この俺も見ててハラハラするっつーの!」


 ヨシの意見と珍しく一致した海斗の意見に、少し努は戸惑った。


 磁石のS極とS極がピタッとくっつくくらいの驚きだ。


いや、科学の常識を覆すほどではないが、努にとってはそのくらいの驚きだ。


「珍しいな。海斗とヨシ、お前らが同じ事を言うなんて」


「はあ!?誰がこんな男と!」


と、海斗。


素直じゃないのか、本気で嫌がっているのかわからない。


「まあ、俺はこんなホラ吹き男でも受け入れるけどな」


受け入れるとは、どういう意味だろうか。


誤解を招く言い方をヨシは昔からするのだ。


「ちょっとヨシって同性愛者なの~?まあ、そんなヨシもあたしは好きだけどねっ」


 ヨシの横にいる女子がやっと口を開いた。


 羽田くるみだ。


ヨシのことは小学校から知っていて、それから中学、高校とずっと一緒。


ヨシに好意を寄せているが、ヨシ自身は相手にしていない。


好みじゃないんだとか。


 くるみはくせっ毛で、校則違反をしないほどの軽いおしゃれをしていつも学校に来る。


そのおしゃれのおかげかどうかは分からないが、


ファンクラブもあるとか…無いとか?


まあ、そんな噂が立つくらい、モテている。


なのにヨシ一直線。


―――――もっといい男がいるだろ。


 努はずっとそう思っている。


高校で出会った三か月前から…くるみに一目惚れしているのだから。


こっちに気が向かないか、などと考えたりもするが、


ヨシ一直線でヨシ以外誰にも振り向かないので、半分あきらめかけている。


 そして、努の数少ない友達はもう一人いた。