掃除が終わると、帰りの会というやってもやらなくてもいいような会が始まる。


帰りの会の始まる挨拶から、帰りの会が終わってさようならをするまで、


教室はうるさいまま。


今も先生の話だというのに、聞く耳を持たず、ほとんどのクラスメイトが喋っている。


 努たち1年3組を担当している五十嵐辰夫(いがらしたつお)は手を焼いていた。


五十嵐は40代後半で、体系はぽっちゃりめのおじさんだ。


そして五十嵐が手を焼いているのが、


もちろん、不良グループ。つまり学級の8割にだ。


残りの二割はまともな者だった。


 30人いるうちの8割…24人。


1人、2人ならまだしも20人を超えると、大変の域を超えてしまうのだ。


 そんな学校生活のちょうど3ヶ月目。


五十嵐にとってみればやっと3ヶ月、といったところだろう。


 そのためなのか、4月には真っ黒だった五十嵐の髪も、


今ではつむじの辺りから白髪が生え始めてきている。


それを生徒たちにからかわれ、余計手を焼くきっかけとなってしまった。


本人も気にしているだろうに。


 「ほら、先生の話だぞ!皆、聞けって!」


騒がしい中でまっすぐに飛ぶ努の声がした。


あんなに騒がしかった教室が嘘のように静まり返る。


 五十嵐は、この努のおかげで何とかやれていた。


生徒のおかげで成り立っているのは恥ずかしいと思いながらも、


ついつい、頼ってしまうことも多かった。


「えー…いや、俺からは特に何もないぞ。よし、帰りの会、終わろうか」


 すると日直の号令も待たずに不良たちは


「「「さよならっしたーーーー!!!」」」


それぞれかばんを持ち、扉を足で開けて教室を出て行った。


 ―――――やれやれ。


そう思いながらも、このクラスの生徒たちは大事にしている五十嵐。


 そして模範生徒の努は、数少ない気の会う友人たちと席について談笑していた。