あなたの心理テスト(ホラー)

 「あの…無いんです」


「「は?」」


 店員と蘭が努を見つめる。二人とも目を丸くして。


「さっきまで有ったのに、目当ての本がなくなっているんです」


「そうですか?まあ、そのうち入荷されると思われるのでまた来てください」


 店員は重い梯子を持ってきたにも拘らずさわやかな笑顔で努に微笑んだ。


 努はそれを見てさらに申し訳なくなるのであった。


「努、残念だったわね」


 蘭は眼鏡を人差し指で直しながら呟いた。


―――――何で無くなっているんだ?俺たちがここを離れたのはほんの数分なのに。


「では、ごゆっくり」


 そう言って店員は笑顔を保ったまま再び梯子を担いで戻っていった。


「ハア…」


 店員の姿が見えなくなったと同時に努は大きなため息をついた。


「ちょっと、幸せが逃げていくわよ」


 そんな蘭の言葉も努の耳には入らない。


―――――幸せなんてこの時点で逃げてるさ。


「ハアアア……」


 さっきよりももっと大きいため息をつく。


「あのね、幸せが逃げていくって言ってるじゃないのよ」


 そんな蘭の言葉も無視して考え事をする努。


―――――目当ての本が無いんじゃ、ここにいる意味がないな。


   仕方ない。帰るか。


「じゃあな。また、学校で」


 努は少し不機嫌な蘭にそれだけ告げ、この場を去ろうとした。


帰る、はずだった。


ぐいっ。


「!?」


その時、努の服が何かに引っかかって、努は前に進めない。


―――――なんだ?どこかに引っかけたかな?


 服が伸びている方向へと目を移動していく。


そして目が行きついた先に、


「ちょっと待ちなさい」


蘭の手があった。


 蘭はと言えば俯いて努の制服の端をつかんでいるだけ。


ちょっと待ちなさい、と言ったきり、何も言ってこない。


俯いているからなのか、蘭の眼鏡は珍しく光は反射していなかった。