「これは?」

「あぁ、花桜ちゃんに渡して。
 ただ渡してくれるだけでいいで」


そう言うと、私の手の中へと木箱をしっかりと手渡す。



「何が入ってるの?」

「あぁ、中か……。簪や」



そういった山崎さんは、凄く照れくさそうに笑ってた。




簪を異性に送る。
それは……現代で言う、プロポーズの指輪のようなもので、
中身を知ったとたんに、私もドキドキしてしまった。



「いいなぁ、花桜」

「ほんまは、オレが自分で手渡したかってんけど、
 まだ暫く帰れんから。

 けど帰るまで花桜ちゃん待たせるのもしたくないねん。

 オレが傍に居なくても、こいつに花桜ちゃん守ってほしーてな。
 気が付いたら手に取ってたんや。


 岩倉は……沖田さんにねだったらええ。
 すぐに会えるんやから」



そう言うと山崎さんは、私の背を押して船の方へと送り出した。
出航準備が終わった船は、ゆっくりと港を離れた。



そして私が大坂へと辿り着いたとき、
港には大好きな総司と、花桜が姿を見せてくれていた。



「瑠花ぁー」


下船途中の私の聴覚に響く、花桜の声が聞こえる。
急いで船を降りると、船に乗せてくれた人にお礼をきっちりと伝えて、
私は二人が待つ方へと走っていった。


「花桜、総司~ただいまー」

「おかえり、瑠花」


真っ先に私に抱き着いてくる花桜。

そして、そんな花桜が私が離れたタイミングで、
総司もまたお互いの温盛を確認しあう様に、ゆっくりと抱き着いた。


「お帰りなさい……瑠花」

「ただいま。総司」

「さぁ、帰りましょう。
 瑠花は馬へ。
 私と山波は歩きますから」



そう言うと、総司が手を貸してくれて私は
馬の背へと座った。



歩き続けて辿り着いたのは西本願寺。




帰った旨を報告して、山崎さんから預かった手紙を土方さんへと手渡すと、
私は花桜の待つ私たちの部屋へと足を踏み入れた。