京を出て歩いて目指す先は長州。



萩の国を目指す。



花桜や瑠花と別れて屯所を後にして目指す故郷。



屯所を抜け出すのに、喧嘩もじさないと思ってたのに
拍子抜けなほどにすっと抜けることが出来た私。



その後ろには斎藤さんや花桜や瑠花たちの優しさがあったのはわかるけど
こうやって給金だってさりげなく路銀をくれる不器用なあの人の優しさ。



そんなさりげない優しさはアンタ変わってないんだね。






変わってないよ。


その何処までも不器用すぎる生き方。

切ないくらいに苦しすぎる自分に厳しいその生き方。




遠い昔に感じた、
そんな感情に押しつぶされそうになりながらも
私は今を歩くって決めた。




今度こそは、
アンタの心を助けてあげられるようにと。




そして私の願いを全て叶えさせたくて。





途中雨が降ろうと、道がドロドロになろうと
旅路を急ぐ私の足は止まらない。



現代からこの世界に来た時、
記憶喪失だった私が通ったであろう大切な道。



そして……ずっと昔、義兄や晋兄に置いて行かれたと泣きながら、
必死に京を目指した道。



その道が今度は晋兄の最期の時間を共に過ごしたいっと思う、
私の願いを叶えるために急ぐ光の道。




見覚えのない道、遠い記憶の道のはずなのに
心が伝えてくれる、故郷へと続く道。



だけど今や長州は朝敵。




朝敵と成り下がった長州の民に人々は優しくないから、
長州への道程を大平にすることは出来ない。



長州へ向かう途中のお茶処でも、休憩する人たちの話題は、
長州を狙って、幕府が討伐に出るって噂だよって
そんな話を人々は興味津々に他人事のように口にする。




花桜や皆から貰った路銀で、
時折、休憩するもののそんな人たちの会話を聞いてたら
イライラして思わず、右手を握りしめる。