「ねぇ、花桜。
私、花桜が少し羨ましい。
簪ってね、その身で命を守ることもできるから、
『お前を守る』っとか『一生添い遂げる』って意味があるのよ。
だからちゃんと、その思いを受け止めるなら、髪結いに使うんだよ。
それが返事になるんだからね」
そうやって瑠花は私に笑いかけてくれた。
瑠花が教えてくれたのは、楽しい話だけじゃない。
近藤さんたちと一緒に広島に出掛けた時、
伊東さんたちは別行動で薩摩の人たちと交流を取ろうとしていたこととか、
ここ暫くの土方さんの険しい顔つきの理由が少しずつ見えて気がした。
暫くして長州第二次征伐がと言う戦いが始まり、
その年の夏、将軍家茂公が鬼籍に入った。
将軍が亡くなった後、幕府は停戦に向けての交渉に入る。
それでも京では制札に危害を加える者たちの取り締まりで、
新選組は慌ただしく駆け続けた。
時代は大きく動き出そうとしているもみたいだった。