「失礼します」
お辞儀をして土方さんの部屋を出ていくと、自室に戻って瑠花からの手紙を呼んだ。
瑠花は広島から、萩にまで辿り着けたこと。
萩で舞を知るものと会えたことが綴られていたものの、
舞とは会うことが出来なかったのだとも記されていた。
その後は広島まで再び戻って、
経緯で……山崎さんの女房の真似事をして、
京に帰れるタイミングを待っていたのだと言う。
烝の女房の真似事って何してたんだろうって思うところもあったけど、
烝が元気なのが瑠花の手紙でも伝わってくる。
『ちゃんと守ってくれたんだ。
瑠花をお願いって頼んだこと……』
お揃いの香袋を見つめながらもう少しで瑠花とあえるのだと思うと、
やっぱり嬉しかった。
暫くして、沖田さんが私の部屋へと訪ねてきた。
山崎さんの女房の真似事。
そんな文章を沖田さんに見せるわけにいかないと、
瑠花の手紙を慌てて畳んで部屋のドアを開けた。
「山波、今、土方さんに聞いたんだ。
瑠花が帰ってくるんだね」
「はい。
今、私も土方さんに聞きました」
「大阪まで護衛してあげるよ。
君一人だと、まだまだ危なっかしいからね」
照れ隠しのような、沖田さんの言いように思わず、
頬が緩んでしまう。
「山波、何笑ってるの?
さっ、準備しておいで。
午後には出発するよ」
沖田さんはそう言うと私の部屋を出ていく。
荷造りを済ませ旅のしやすいように着替えなおすと、
午後から京から大坂へとむけて出掛けた。
何処からか手配してくれた馬の背に、
まず沖田さんが乗馬して手綱をとる。
そして私を後ろへと引き上げてくれた。