そして……突拍子もない話を聞いた。




「舞、次の戦いの為の船が手に入った。
 名前は丙寅丸【へいいんまる】じゃ」 




上機嫌でそう話してくれた晋兄がグラバーさんから買い付けたお買い物。


この丙寅丸が後の戦いで大活躍するんだけど、
やっぱりどれだけ傍に居ても、私には晋兄が何かを考えているかなんて見えてこない。



だって丙寅丸を藩の了解なしにポンって買っちゃったんだよ。
藩の命令で買い物したんだって、真実を知るまでは思ってたんだから。



だけど……晋兄には、私には見えてない世界がずっとずーと見えてるんだと、
それだけは感じられる。


行き急いでいるように見えるときもある。
何時、晋兄の病気が発病するかはわからない。


だからこそ、私は傍でしっかりと見届けたいって思えるから。



晋兄……。
貴方が見つめる世界を、少しでも私に感じさせて。