「良く、眠れたか?
 明け方まで寝てなかっただろ」

「えっ?」

「で、舞の答えは見つかったか?」




私の答え……多分、晋兄は最初から難しいことなんて求めてない。



「晋兄、私絶対に死なないし殺られないから。
 もしもの時も、自分の身は自分で守る。

 だけど、その『もしも』なんてことも起こらないから。

 私は晋兄とここにいる仲間たちと生きて祝砲を聴くんだから」



そう。

敗戦覚悟の戦なんて、敗北を想定しての戦なんて晋兄は考えてない。
晋兄は何時だって、どんなに大きな敵でも勝つための戦を模索し続けてきた。



先に旅立ってしまった皆の想いを沢山、背負い続けて今を駆け続ける。
そんな晋兄の傍で、勝利が来ないはずないんだから。




「良く言った。
 軽く体だけ慣らしておけよ。
 味方からの知らせが来たら一斉に城に雪崩れ込むぞ」




その名の通り、その日のうちにお城は攻め落とされ、
藩の実権を握っていた椋梨は、城への出入りを禁じられることになった。




勝利の祝砲は大きく響き渡り、これから動き出すであろう新しい長州の未来に、
その場にいた人たちと一斉に喜びを分かち合った。




晋兄は勝利を得た後も、家には帰ることはせずにまた、海を渡って四国へと身を寄せる。


勝っても負けても、お尋ね者の暴れ牛は変わらない。
逃亡先には前に見かけた、おうのさんの姿がそこにあった。




それでも……変わることなく優しい晋兄の傍で過ごせる時間が今の私にはとても嬉しかった。





時代はきっと動き出す。
時はずっと変革を求め続けている。