「舞、そろそろ中に入れ。
 ほらっ、体冷えてるじゃないか」


迎えに来られてしまった晋兄に連れ戻される形で、
船の中へと連れられて行く。


軍艦だけあって、船内からは大砲が顔をのぞかせてる。


大砲の傍で、明日の戦いに向けてそれぞれが暫しの休息をとっている空間。
蝋燭のあかりだけが、ほのかに揺れて船内を映し出していた。






「舞、明日の朝から城に向けて派手に空砲を打ち込む。
 忙しくなるぞ。

 ある程度、城内を混乱させた気に突撃する」

「明日もちゃんとついていくから。

 足手まといにならないように、ちゃんと気を付けるし……助けなくてもいいから。
 自分の命はちゃんと自分で守るから」



駄目だって言われたくなくて必死に迷惑かけないってことを伝えたくて口早に告げる。
 


「駄目だ。

 助けなくてもいいからって、そんな気持ちの奴を連れていけない。
 作戦決行までの間に、休息と戦う意味をよく見つめなおせ」
 


そう言って晋兄は再び私の傍から立ち上がって、
少し離れたところで壁に持たれながら座ると、ゆっくりとその瞼を閉じた。



仄かに映し出す晋兄の横顔をチラチラと見つめながら、
明け方近くまで眠れない時間が続いた。


いつの間にか眠ってしまった私は不思議な夢を見てしまった。






「生まれたのか……」

「はい」

その小さな赤ちゃんを抱きしめて笑う夢の中の男性。

その人の顔は見ることは出来なかったけど……、
あなたの口元は……知ってる気がする。


……斎藤さん?……







ドカーンっと言う大きな音で慌てて飛び起きた私は、
すでに今日の作戦が始まってしまったことに気が付いた。




「おぉ、どれだけでもいいぞ。
 どんどん、城に向けて打ち込んでやれ。
 
 どうせ被害なんて出ない。空砲だからな」

「言われなくても打ち込みますよ。
 勝利を告げる祝砲まで」




晋兄の声に呼応するように、それぞれけの大砲の前で作業をしてる仲間たち。




「ごめんなさい。私も……」

「おぉ、勝利の女神も目覚めたみたいだな。
 どんどん、打ち込め。祭だ祭り」



なんて囃されながら、大砲の音をバックに私は晋兄の方へと近づいた。