「山波、斎藤と岩倉に聞いた。
 加減はどうだ?」

部屋の襖が解き放たれて姿を見せたのは副長の土方さん。


そして土方さんの後ろには仕事モードの烝が、
土方さんに見えないところから両手をあわせて合掌してる。


重怠い体を必死に布団の中から起こして周囲を見回す。


「どれくらい眠ってたの?
 こんなことしてる場合じゃない」



そう言いながら必死に体を起こそうとする私を
支えるように土方さんがスーッと入り込んで立ちあがらせてくれる。



「てめぇ、
 余計な仕事増やすんじゃねぇ」

「煩い。
 誰も支えて欲しいなんて頼んでないでしょ。

 もとはと言えば、アンタたちがこんなことしなければ、
 山南さんが……」


山南さんが一人で全てを背負おうとすることなんて
なかったのに……。


何度も何度も見続けていた白装束の夢。



あの夢が……この先に続く、
山南さんの最後の時間だったのかも知れないと
今の私は思ってしまう。


誰も答えは教えてくれないけど、
私の中ではそんな気がした。




何度も見続けた夢。
私のご先祖様。




あの見続けた夢が私をこの場所に誘ったのだと私の中で仮定すれば
多分、この後続く出来事は何があっても見届けないと行けないことなのだと思う。



歴史が変わっても、どうなっても蚊帳の外なんかじゃ居られない覚悟。



まだ眩暈が起こるその体を必死に支えながら、
沖影へと手を伸ばす。



沖影が……私を支えてくれるような気がする。





「山南さん……かっ。
 山波、山南さんが法度を破ったことを知っていたのか……」



土方さんから告げられた言葉に、
私はただ何も発さずに頷いた。



「……そうか……。
 山南さんを総司が追っている」



そうやって告げた土方さんの表情が僅かに曇った気がしたけど
その先の想いまでは汲み取ることが出来なかった。




「土方さん……私……」

「好きにしろ」



それだけ告げると土方さんはすぐに私の部屋から
静かに出て行く。



『バカヤロー』


ただ一言、叫ぶように吐き出して
壁をバンっと叩くような音を残して。