時間だけが過ぎていく。




私に出来る事は、
そう……今、出来る事を精一杯するだけ。



さっきの戦いで怪我をした人の手当をして、
次の戦に備える。

そして……食事。



今は晋兄が帰ってくるのを信じて。

腹が減っては戦は出来ぬ。


限りある食糧を無駄には出来ないけど、
全く使わなければ、それも士気が低下しちゃう。

そう言う、もろもろの雑務をこなしながら
一日、二日と時間が過ぎていた。




「伝令有。
 
 丙辰丸(へいしんまる)・ 癸亥丸(きがいまる)など、三艇確保」



突如、もたらされた吉報に
留守を守ってる私たちの方にも喜びが走る。



「山縣狂介、奇兵隊と共に到着」


一気に膨らんでいく晋兄の勢力。




山縣狂介は山縣有朋のことだったはず。 



「遅くなってすまぬ。
 我らはこれより、金麗社へと本陣を構える」



遅れて来た山縣さんが告げると、
集まっていた人たちは、一斉に出陣の準備を始める。




「君はこちらへ」



そう言って山縣さんから差し伸ばされた手。



「君は戦女神なのだろう。
 高杉も後で合流する」



そのまま陣を移動して闘い続けた時間。


長州の骨肉の争い。


戦い開始から3日後。


一度は、負け始めていた戦は晋兄たち決死隊の合流もあって
一気に息を吹き返した。


その争いが決着したのは10日の後。


後の世で言う、大田絵堂の戦いは
晋兄たち正義派の勝利で幕を下ろした。







「舞、祝杯だ」




そう言って手を伸ばしてくれたその手を
私は、迷わずに掴み取った。




未来を切り開くために必死に立ち向かう、
そんな人の強さ。



思い。




その全てを噛みしめるように自分の中に、
刻み込みながら私は遠い京で「今を生きる」
二人の友を空を見上げながら考えていた。 
  



晋兄の起こした奇跡を一番近くで感じながら。