「失礼します」
私たち二人がいる部屋に、
隊士の一人が声をかける。
「先ほど、近藤さんが京に入られたとのことです。
今日にも、こちらへお戻りになられる予定です」
静かに隊士は告げて、
私たちの前から姿を消した。
近藤さんが帰ってくる。
思ってた以上に、
物事が早く動いてる気がする。
まだ先だって思ってた出来事が少しずつ目前に迫ってくる。
そして……花桜が悲しむ。
そんな花桜の悲しむ姿を想像するだけで、
そんな日が来なければいいのにって
思ってしまう。
大切な支えがいなくなってしまう悲しさ。
それは私が一番良く知ってる。
ただでさえ、花桜のことは私が沢山苦しめた。
だからこそ……幸せそうに過ごすこの時間を、
叶うならずっと続いてほしい……ずっとが無理なら、
せめて少しでも長く……。
「近藤さんが帰ってくるなら僕も準備しなきゃ。
じゃ、瑠花。
瑠花はこのことを、山南さんに連絡してくださいね。
土方さんのところに行ってきます」
総司は手入れを終えた刀を手にゆっくりと部屋を出て行った。
私も総司とすごしていた部屋を後にして、
花桜が行き来している部屋へと向かう。
近藤さんが帰ってくることに総司は喜んでる。
だけどそれは……アイツが来ることになる。
もう時間がない。
動くなら、早く動かなきゃ。
このことを花桜に早く伝えるべき?
山南さんが切腹するあの日が近づいていると。
史実では、切腹とも自殺とも言われているけど
そのどちらもが、山南さんの命が途切れることを示している。
そんなことを考えながら、
私は山南さんの部屋らしき場所へと辿りついていた。
「山南さん、岩倉です」
障子の前に正座して奥の部屋へと声をかける。
中からごそごそと音がして、
スーっと障子が開かれた。



