「じゃ、始めようか」
懐かしい山波道場で稽古をしていた時みたいに、
二人向かい合って、木刀の切っ先を互いに向けながら最初の一手を繰り出す瞬間を睨みあう。
「たぁぁっ」
沈黙を破ったように声を発して打ち込んできたのは敬里。
その敬里の剣を何度も何度も受けてこの幕末に入ってから身に着けてきた、
半歩先への踏み込みを意識しながら、踏み込んでは相手の急所へと剣の切っ先を突き付ける。
ずっと成長してないって思ってたのに敬里と向かい合いながら、あの頃より強くなってる自分を実感する。
「花桜、もう一回」
打倒されても打倒されても何度も起き上がって、再度挑み続ける敬里は、
丑三つ時が近づく頃、私が習得するまでに時間がかかり過ぎた、半歩先の踏み込みを習得しようとしてた。
「なら花桜。次は真剣でいいか……。
こいつの重さにも、オレは慣れてないといけないだろう。
逃げても仕方がない。
今はオレが、この世界の沖田総司なら沖田総司として生きていくしかないだろう」
そう言うと、敬里は腰に下げていた刀を手にする。
その刀は、ずっと沖田さんが愛用していた刀に違いなくて。
真剣を使った練習は、その後も明け方まで続けられた。
冬のお日様が昇り始めた頃、敬里は私が説明した幹部たちの部屋へと戻る。
私は敬里を見送って、舞が眠る部屋へと戻った。
部屋に戻ると、舞の様子を覗き込む。
暫く舞の布団の傍で座ったまま仮眠をとる。
すると、もぞもぞと舞が動いている気配を感じて私は覚醒すると、
舞を覗き込んだ。
ゆっくりと舞の瞳が開かれる。
「舞、大丈夫?
斎藤さんが抱えて運んできてくれたんだよ。
雨の中、裸足で何処に行ってたの?
一時期は熱も出てて大変だったんだよ」
舞の熱が気になって、そっと伸ばす手。
「良かった。熱も下がってきたみたいだね」
舞の傍から立ち上がると、障子をあけて外の空気を部屋の中に入れる。
「いい天気だね」
私は大きく伸びをしながら舞に話しかける。
「ねぇ……瑠花と沖田さんは?」
「ううん、まだ見つからない。
夜中に、近藤さんを乗せた馬が帰ってきたの。
瑠花と沖田さん、どうしたんだろう。
歴史通り、近藤さんは誰かに銃で肩を撃ち抜かれてた。
烝が傷口を確認して初期治療はしたけれど、
近藤さんは大阪城で療養することになったって聞いた。
それに……」
沖田さんは敬里にすり替わってた。
最後の言葉は、すぐに告げることなんて出きなくて言いかけて飲み込む。



