「舞……」
「こいつが舞?」
布団の中に眠る、舞の姿を見て、戸惑う様に呟く敬里。
「舞だよ。
何言ってるのよ。
あんた、暫く合わないうちに、もうろくして舞を忘れたの?」
敬里が相手だと、テンポが狂っちゃう。
ずっと抑圧し続けてきた、私が弾き釣り出される。
「うっせぇー。もうろくとはなんだ」
敬里がそうやって憎まれ口を叩いてくる、そんな感覚が懐かしくて。
「おぉ、何や賑やかやな。
沖田さんとそんなに仲よーいちゃつかれたら、オレやきもちやくでー。
簪まで受け取ってもろた仲やのに」
そういいながら、また神出鬼没の丞は姿を見せて舞の様子を約束通り診察してくれる。
「丞、おかしな話していい?
こいつは、沖田さんって何でか呼ばれてるけど私の血縁者。
山波敬里。私と同じ時代から来た人間だよ」
そう言うと、丞は不思議そうに敬里をじっと見つめた。
「オレには目の前にいるこのお人が、沖田さんやと感じる。
ただ花桜ちゃんが、別人やって言うんやったら、花桜ちゃんの目には別の人に見えてるんやと思う。
信じるとか、信じないとか、そう言うのはわからんけど、
オレは花桜ちゃんの言葉を受け止める。
だけどそれは……オレだけの心にとどめとくわ。
山波敬里って言ったか?
その名を呼ぶのも、これきりや。
オレにとっても、今目の前にいるこの人は沖田総司。その人やから……。
けどその前に、自己紹介や。
花桜ちゃんの身内のお人にな。
山崎丞。花桜ちゃんを命かけて守るて決めた、一人の男や。宜しく頼むわ。
ほな、こっからは沖田さんに対してやな。
明朝、局長は療養のため大阪城へと移動する。
副長からの命令は、沖田さんに局長の護衛を命ずるっちゅうことや。
今のうちに準備しときや」
そう言い残して、丞は音もたてず姿を消した。
さっき、丞の言葉に一瞬でも赤面してた私がバカみたいじゃない。。
一気にムードなくしたよ。
「なぁ、花桜。
明日、オレは沖田総司として近藤局長と一緒に、
この場所から大阪城に行くってことなんだよな」
「そうみたいだね」
「わかった。なら……俺も覚悟をとっとと決めなきゃいけないってことだよな。
ズルズルと戸惑って嘆くよりは……」
「だね」
「だったら久しぶりに手合わせ頼んでいいか?
俺よりも先に、この世界に来てお前もずっと沖影と一緒に居たんだろう」
「うん。
敬里には悪いけど、斎藤さんにも、沖田さんにも、山南さんにも、藤堂さんにも、土方さんにも稽古つけてもらった。
敬里に負ける気はしないから」
「だろうな。
どこか、練習できるところあるか?」
敬里に言われて、私は道場として使っている一角を思い出す。
「道場があるわよ」
「なら、そこに連れてってくれ。
ついでに花桜が関わった人たちの特徴も練習しながら情報を共有させてくれ」
私は眠り続ける舞をチラリと視線を向けて、
敬里と共に道場へと向かって、道場の蝋燭に明かりを灯した。



