「私も、舞も、瑠花も、私たちのままだよ。
だから正直、敬里が沖田さんと呼ばれてることに、私も戸惑ってる」
「ここは新選組なんだよな」
「うん」
「俺が呼ばれてる沖田は、あの沖田総司なのか?
それとも、もう一人居たと言われてる、別の沖田?」
敬里はまっすぐに私に問いかけをぶつけてくる。
「ごめん。別の沖田さんの存在を私はしらないから、何とも言えないけど、
敬里は今、沖田総司として存在してる。
それは間違いないと思う。
さっき、敬里のことを沖田先生って慕って輪を作っていたのは、
沖田総司が率いてた、一番隊の隊士の人たちだから」
そう言うと、敬里は再びその場へと座り込んだ。
「……なんだよ、それっ」
整頓しきれないほどの現実に、敬里は戸惑いを隠し切れないのが伝わってくる。
私もこの世界に来て、馴染めなくて戸惑った。
だけど……多分、今目の前にいる敬里の戸惑いは、私が経験したものとは違う気がする。
長い沈黙の後、敬里はゆっくりと口を開いた。
「俺がこの世界の沖田総司なのだろう。
だったら、昨日までこの世界に居たはずの沖田総司はどうしたんだ?
ここが京で戊辰戦争がまだって言うのであれば、
沖田総司はまだ生きているはずだろう?」
敬里はそう言って、まっすぐに私を視線で見据える。
「昨日までこの世界に居た沖田さんが、今どこに居るかなんてわからない。
沖田さんは、瑠花と一緒に、近藤さんを助けるために別邸を出たの。
そこで離れ離れになった。
今言えるのは、この世界から瑠花の存在が消えてしまったと言うこと。
そして沖田総司の存在が、敬里に代わってしまったということ」
そう……あの沖田さんが消えて瑠花も居なくなってしまうなんて、
なんでこんな不思議なことが起きるのよ。
私だけじゃなく、敬里までこっちに来てしまったら、
向こうの山波道場は誰が後を継ぐのよ。
後継者の証である沖影は私の手にある。
だけど……万が一、私がこの時代から帰れなくても敬里に山波道場を任せられるって思ってたのに。
「なぁ、瑠花が行方不明って言うのはわかった。
舞は?舞にあわせてくれよ」
敬里の言葉に私は、我に返ったようにすっかり抜け落ちてしまっていた現実を思い出す。
「あっ、敬里。ごめん。
舞、高熱出して寝込んでるの。
私、井戸水汲もうと思って部屋を出て忘れてた」
「ったく、馬鹿かっ。
お前は」
敬里は呆れたようにため息を吐き出して、
私に言うと立ち上がって、元居た方へと歩き出す。
私は沖田先生と呼ばれる敬里と一緒に、
庭の井戸で水をくみ上げると二人で舞が眠る部屋へと歩んだ。
「舞、ごめんね。
手ぬぐいかえようね」
いつの間にか額から落ちてしまっていた手ぬぐいを手にして、
桶の中に放り込むと、氷の様に冷たい水を浸した手ぬぐいを絞って、
私の体温で程よく調整した後、再び舞の額へと乗せた。



