無心に心の中で願い続ける時間。
ふいに雷の音が大きくなって眩しい光が姿を見せた気がした。



龍神様?
そう思ったのも束の間、山鳴りを巻き込むような大きな落雷が轟いた。


一瞬見えたビジョンは、その落雷が瑠花たちを貫いたこと。
二人はその衝撃と共に光に包まれて消えた。



助かった?
多分……龍神様が助けてくれた。


そのまま腰が抜けたように、私は岩神さまの傍でペタリと座りこんだ。




「終わったのか?加賀」



静かに問いかける声に私はゆっくりと頷いた。


「多分……これで大丈夫」


斎藤さんにそう呟いて私の体の力は抜けていった。



気が付いたのは岩神様の前ではなくて見慣れた屯所内の部屋。



「舞、大丈夫?」


心配そうに私を覗き込んで声をかけるのは花桜。


「斎藤さんが抱えて運んできてくれたんだよ。
 雨の中、裸足で何処に行ってたの?

 一時期は熱も出てて大変だったんだよ」

そう言いながら、花桜はそっと私の額に手を伸ばす。


「良かった。熱も下がってきたみたいだね」



そう言うと、花桜は部屋の襖をゆっくりと開いた。


冷たい冬の風が吹き込んでくるものの、
空は昨日の大荒れの天気が嘘のように澄み渡ってた。
 

「いい天気だね」

「ねぇ……瑠花と沖田さんは?」


昨日見たビジョンが嘘だったらいいと、
そんなことを思いながら問いかける。



「ううん、まだ見つからない。
 夜中に、近藤さんを乗せた馬が帰ってきたの。

 瑠花と沖田さん、どうしたんだろう。

 歴史通り、近藤さんは誰かに銃で肩を撃ち抜かれてた。

丞が傷口を確認して初期治療はしたけれど、
 近藤さんは大阪城で療養することになったって聞いた」



花桜の言葉に、あの感覚が夢ではない現実なのだと確信した。



「ねぇ、花桜。
 多分、瑠花は一足先に現代に戻ったよ。

 沖田さんを連れて」

「えっ?」



私の言葉に、花桜は凄く驚いた表情を見せた。
だけどそれはすぐに、安堵の顔へと姿を変える。