その途端、総司は先ほどまでふらふらしていた人とは思えないほどに、
機敏に動いて何処かへと姿を消す。


刀と刀が打ち付けあう音が響いた直後、
再び銃声の音と、咳き込む音が届く。


「おいっ、とどめをさせ
 今なら殺(や)れるだろ」


そんな声が聞こえて私はいてもたっても居られなくて隠れていた岩陰から、
立ち上がる。




「おいっ、病人なんかやめておけ。
 もうすぐ来るぞ。

 各自、配置につけ」



そんな声が聞こえると、その中の一人が総司に向かって再び銃を向けた後、
一発撃ち放って消えていった。





「総司っ!!」




駆け付けた総司の体は咳き込んでいる間に斬りつけられたような背中からの傷と、
銃で撃たれたような跡が見られた。



そんな体になっても、まだ近藤さんを守るために、動かない体を動かそうと必死になる。
そのたびに、傷口から流れ出る血。



総司の体から血の気が引いていくのが感じて取れた。



「総司っ、総司っ!!」


「けほっ……ゴホ、ゴホ、ゴホっ……」っと、総司は咳き込みながら、
その中で近藤さんを気遣い続けるものの、その声も弱々しく聞き取れないものになっていく。

私が抱える腕の中で、徐々に脱力していく総司の体。


「総司っ!!
 誰かっ、助けて……」



もう、なりふり構ってられない。


私が総司を追い詰めた。
私が残酷な未来を突き付けて、この時代の生きる大切な命を軽んじた。

私の言葉に惑わされた総司は、
まだ生きられた命をこんなところで途切れさせようとしてる。