「嫌っ。花桜と舞は屯所に戻って。
 でも私は総司と一緒に行く。

 私は総司と一緒に、その隣を歩いていくから、
 二人はちゃんと現代に戻って。

 総司、私は行くわよ。
 総司と一緒に。

 残酷な事実を告げた私は、それを聞かされた人がどう生きるのか見届ける義務があるもの」



なんでもいい。
どんな無茶苦茶な理由でもいい。

ただ私が総司の傍に居続けることができる、大義名分が手に入れば、それだけでいいのだから。




「……瑠花」


私の名をゆっくりとつぶやいた後、総司は「わかりました」っと諦めたように、
同行を許してくれた。


その後はすぐに旅支度を終えて私たちは近藤さんの別邸前でわかれて、
それぞれの道を歩き始める。


二条城を出た近藤さんが帰る道。
その道順を思い出すように京都の碁盤のようになった道をを思い出す。



別邸を出た後から総司は体力が消耗している素振りも外に見せようとせずに、
スタスタと歩いていく。 

その隣を肩を並べて歩くのが必死だった時間。
だけど次第に、その速度は遅くなっていく。



「総司?」

「瑠花……大丈夫です。
 今は少しでも早く近藤さんのところについて護衛をしなくては……」


近藤さんを守ること。
それだけが今の総司を奮い立たせているのが伝わってくる。

だけど……次第に冷え込んでいく気温に体の体温は奪われ、
総司が咳き込んで、血を吐く回数が増えていく。


「総司?」


総司を説得したくて、何度も何度も名前を呼ぶけど、
総司はうわごとの様に『近藤さんを助けに行かなきゃ』っとそればかりを繰り返し口にして、
ふらふらとした体のまま、一歩ずつ、踏みしめるように前進する。



それは総司が残された命の灯を削って生きようとしてるみたいで、
見ているだけで苦しく胸が締め付けられる。



「瑠花っ。
 僕から離れて、少し何処かで隠れてください」




ふいに総司の緊張した声が私の聴覚を刺激する。


「瑠花っ、早くっ!」


総司に背中を押されて倒れた途端に銃声が鳴り響いた。