「総司、わかった」
ずっと私も悩み続けた。
歴史を知識と言う形で知っている私。
今までも、どれだけ歴史が代わって欲しいと願いながら思い続けても、
その歴史は変わることはなかった。
だけど……こんな風にも考えられるかもしれない。
総司たちが、新選組の仲間たちが歩き続ける道は波乱の道で、
あまりにも険しすぎる。
だけどその歴史を受け止めたうえで制一杯、後悔のないように生き抜くことができるのなら、
それはそれでいいのかもしれない。
そんな風にも思えた。
私は花桜と舞の目をまっすぐに見ると、
ゆっくりと笑顔を作って視線で頷く。
すると私の想いを受け止めるように、花桜と舞もゆっくりと首で頷いてくれた。
「私が話すこれからの出来事は、総司には残酷だよ。
だけど……私は、総司に生きて欲しいから。
布団の上で、生きて死んでるようなことにはなって欲しくないから……」
そう……油小路の変が終わった、あの夜のような総司をもう見たくないから。
「油小路の変が終わった後、高台寺党の生き残りに近藤さんは肩を撃たれるの。
近藤さんはその時の負傷で、その後の戦いには出られないわ」
「まだ……僕たちは戦い続けるんですね?」
「戦う。だけど……もう江戸幕府はない。
もうすぐ……立場が逆転するの……」
「……僕たちは……新選組は賊軍になるとでも言うのですか?」
「向こうには、錦の御旗が立つから」
「錦の御旗……」
総司はその現実にショックを隠し切れないみたいだった。
「瑠花……僕は?」
「総司は……」
言いかけた私の言葉を遮る様に「いやっ。いいです……。考えればわかることですね。先の戦いに出られなかった私が今のこの体調で、
その戦に出られたとは思えませんね」。
そう呟いた総司は、必死に自分に言い聞かせているように思えた。
「総司……」
「瑠花、その近藤さんが撃たれるのは何時ですか?
昔の僕はその事実を知りませんでした。
ですが今の僕は瑠花の話によって、その未来を知るところとなった。
どうせ……次の戦いに出られないのなら、
このままここに留まっていても、僕は生きながら死んでいるのと変わりません。
僕は僕らしく生きたい。
その日を教えてください」