「山波、後ろ」
「花桜、後ろ」


沖田さんと舞の声が響いて私は向かってくる刀をとっさに屈んでよけて、
立ち上がったすきに相手の胸に一突きした。

抜いて噴き出す血しぶき。
次の一手に繋がるまでの間に舞と沖田さんが残党を切り捨てた。

そして沖田さんの体が、その場で傾いだ。


「総司っ!!」


すぐに瑠花が飛び出してきて沖田さんの傍へと近づく。
するとお孝さんが近藤さんと数人の隊士を連れて別邸へと戻ってきた。

同時に現れた山崎さんが沖田さんを抱えて中の部屋へと入り処置をしていく。

慌ただしく切り捨てられた者たちの対応を終えて、
別邸が落ち着きを取り戻したのは夜が深まったころだった。



その一件があった後から、再び屯所内は慌ただしくなった。
暫く姿を見せなかった斎藤さんが土方さんの部屋から出ていくのを見かけた。



「斎藤さん」
「あぁ、山波か。
 加賀は元気にしてるか?」
「はいっ。
 舞は今、夢の中です」
「近藤さんの別邸の一件、副長にきいた。
 対処できず、すまない」
「沖田さんが病の身でも頑張ってくれました。
 今は高熱が何日も続いて、布団から体が起こせないみたいですけど。
 斎藤さん……教えてください。
 あの日、別邸を襲ったのは?」
「御陵衛士」
「伊東さん?」
「先に行われた大政奉還」
「朝廷に政権が返されたってやつ?」
「あぁ。
 近いうちに伊東たちとやりあうだろう。
 巻き込まれないようにしろ」


そう言うと、斎藤さんは勝手口から姿を消した。




坂本龍馬が近江屋で暗殺された。
そんな、かわら版が世の中を賑わせた数日後。


伊東さんは近藤さんと一緒に呑んだ帰り道、
闇討ち。

そして……新選組の幹部にとってもう一度共にありたいと願い助けたかった、
藤堂さんも戦いの中でその命を落とした。



今の世の中で「油小路の変」と言われている出来事が起きた。


誰も望まなかった現実。
大切な仲間との別れが歴史が変わることなくおこっていく。 



油小路の変から暫くして斎藤さんは山口二郎と言う名前を名乗って、
新選組へと戻ってきた。