「総司、はいっ、お団子。
後、珍しいお客様。
舞」
そう言って、瑠花は沖田さんの前に舞を呼び寄せる。
「加賀、帰ってきたんだね」
「はいっ。
今日、戻ってきました」
「そう。
今日はここで休んでいくといいよ。
お孝さんには伝えておくから」
「有難うございます」
舞は沖田さんの一言で今日の宿を確保したみたいだった。
すると私を迎えに来た丞のことが聞こえる。
「山波はん、お迎えいらしましたえ」
そう言って私の前に顔を出したお孝さんに、
連れられるように私は玄関の方へと向かい丞と一緒に屯所へと歩き出した。
「舞ちゃん、帰ってきたみたいやね」
二人になったとたん、突然切り出す丞の声に驚く。
「知ってたんだ」
「視界に入ってきたからな」
「やっと三人娘が揃ったね」
私は丞に向かって笑った。
「花桜ちゃんが嬉しそうやと、こっちも嬉しーなるわ」
あっという間に屯所へと帰った私はまっすぐに土方さんの部屋へと向かって、
舞が帰ってきたことを伝えた。
そして私と入れ替えで、任務の報告を丞がしているみたいだった。
三人娘が再会して舞も新選組の屯所と、近藤さんの別邸行き来するようになった。
舞と二人、屯所の片隅で手合わせの稽古をする。
舞の太刀筋が、より鋭くなってるのを感じる。
負けじと私も打ち込みを続ける。
「花桜、随分鋭くなったじゃない?」
「私もこっちで頑張ってたもの。
舞こそ、強くなったよね。
あっちじゃ、戦女神って言われてたとか聞いたよ」
「そんな話、誰から聞いたの?」
舞はそう言いながら苦笑いする。
「だけど舞は、あっちで戦争を経験したんだよね」
言うと舞は黙って空を見上げた。
「戦争ってどんなの?」
「大砲とか銃とか使ってた。
私は大砲を打つ船に乗船した」
実際に戦争の中に身を置いた舞の言葉は重たいのだろうけど、
私自身はまだ実感も得られることはなかった。
その日もいつものように屯所内での仕事の後、
舞と二人で近藤さんの別邸へと向かった。
私たちが辿り着いた時、
不逞浪士風の人たちが逃げ出すように別邸からに飛び出してくる。
「えっ?」
戸惑う私よりも先に、舞は刀を抜いてその人たちと斬りあっていく。
私も慌てて舞を追いかけて、沖影を抜いて戦った。
何度も何度も応戦するように相手の刀を受け止める者の、
相手の中に入りこむことが、なかなかできない。