「あぁ、会えてよかった。
 今から壬生に向かわなきゃって思ってたの」

そう言って、舞は嬉しそうに笑う。


「もう、舞の用事は終わったの?」

「うん。
 ちゃんと傍に居たい人を見送ってきたから、
 後は、花桜や瑠花たちと一緒に行けるよ。

 こっちの皆は元気してるの?」


そう言った舞に、私と瑠花は屯所が移ったこととか、新選組が幕府の直参になったこと、
斎藤さんが新選組を今は離れていること、沖田さんが近藤さんの別邸で療養していることなどを話した。


「そっかぁ。
 今、斎藤さん居ないんだ」


舞はそう言って、少し寂しそうに呟いた。


「残念だね。
 斎藤さんも舞が帰ってきてるの知ったら喜んだかもしれないよね」


舞と再会してお団子を調達して別邸へと向かっていると、
私たちにじっと視線を向ける女の人を見かけた。


「ねぇ?
 誰か知ってる?」

視線を感じて瑠花に問うものの、瑠花は首を振る。
すると、私たちの隣に居た舞が少し何かを考えて『深雪大夫』っと声に出した。

その言葉に今度は瑠花が反応する?


「舞、今の本当?
 あの人が深雪大夫?お孝さんのお姉さん?」

「多分、間違いない気がする」

「ねぇ?深雪大夫って?」


その名前を聞いてもピンと来ない私は、
ただ二人の顔をしっと眺める。


「この時代ってお妾さんが沢山いるの。
 新選組の人たちにもやっぱり沢山いたのよ。
 お妾さん。

 深雪大夫って言うのは、近藤さんに五人居たと言われてる愛人の一人。
 ちなみに今居るお孝さんも、御幸大夫って呼ばれてた人で、深雪大夫さんの妹ね。

 ドラマとかでは深雪大夫さんが病で亡くなられて妹のお孝さんを深雪大夫に頼まれて、
 面倒を見ることになったって言われてるんだけど、真実はわからないけど、もう一つの話もあったの。

 深雪大夫を身請けしたけど飽きてしまって、手切れ金を渡して御幸大夫を傍に置いたとかね。
 世間体が悪いから、病気で亡くなったってことにしたとか」


「えぇ、それだったら最悪じゃん」


瑠花の話に私は納得なんて出来ないまま、
深雪大夫さんかも知れない、その人の前を三人で素通りした。


近藤さんの別邸についた後も、瑠花の話を聞いた後だから、
お孝さんの顔がまともに見れないじゃん。


少し下を向いたまま、家の中へと入るとまっすぐに沖田さんの部屋へと向かった。