御陵衛士として、伊東さんや藤堂さんが新選組から出て行って、
屯所内は暫くざわついていたものの、私たちの日々は変わらなかった。

間者としての任務で隊を離れた斎藤さんは、
あの日から報告に帰ってくることもない。


いろいろと剣の稽古をつけてくれていた沖田さんは、
新選組の屯所を離れて、近藤さんのお妾さんが生活している別邸へと移り住んだ。


瑠花は近藤さんの別邸へと一緒に移り住み、
私は屯所内に身を置きながら時折、永倉さんと一緒に京の町へと出ることが多くなった。


永倉さんと一緒に京に出るようになっても、
京の町で何度も何度も不逞浪士たちと遭遇しては町で斬りあうようになった。

目を背けて逃げ出したくなるような時間も、
この世界で歩いていくと決めた私には、逃げ出す選択肢は今はない。


昔仲間だった人が、次から次へと自らの想いのままに命を落としていく。
そんな時の流れを見送りながら、私は今自分が出来る時間と向き合うことに集中した。


そして……あの日がやってきた。


その日、屯所内の家事と朝の訓練を終えた後、
瑠花と沖田さんが生活している近藤さんの別邸へと向かっていく。

私の隣には丞が一緒に行動してくれる。



「さっ、花桜ちゃん行こか」


寄り添ってくれる丞は、私の髪につけられた簪を見て嬉しそうに微笑んだ。


「やっぱ、花桜ちゃんにはその色が似あうわ」

「素敵な簪頂けて本当に嬉しいです。
 この簪は私を強くしてくれますね」

「花桜ちゃんは無理せんでもええ。
 花桜ちゃんのことは、ちゃーんと守ったるで心配せんとき」


丞は、そう言って私をまっすぐに見つめながら自分の方へと引き寄せた。
烝の腕の中にすっぽりと包まれるように体がくっつく。 


「丞
が私を守るって言ってくれるのはとても嬉しいけど、
 私も丞を守りたいです。

 未来の女は強いんですよ」


そう言って私も自らの手を丞へと重ねた。


こうやってくっついて過ごすのも久しぶりで、
今はこの温盛を感じていたい。


僅かな逢瀬の時間を堪能して、私は近藤さんの別邸が見えてきたのを確認した。