「舞、晋作に何か言われたの?」
雅姉さまのその声には、私は倒れる前に言われた言葉を思い出して両肩を自分で抱きしめた。
「ねぇ……雅姉さま、私は雅姉さまが知ってる舞ですか?」
バカだっ……。
私、自分で自分が何言ってるかわからない。
私もわからないのに、雅姉さまに尋ねてわかるはずないじゃない。
私は何者?
あの夢は何?
あれは……何時の戦争なの?
待って……。あの夢、あの夢の中で女の子が着ていたブラウスに書かれてた名札。
名札にはなんて書かれてた?
思い返そうと目を閉じると、
瞼の裏に、その名前が浮かび上がってきた。
嘉賀 舞。
嘉賀 舞【かが まい】。
それが……その女の子の名前?
「舞ちゃん、大丈夫?まだ痛む?」
雅姉さまのあたたかい手が、そっと触れるだけで私はゆっくりと今を感じられる。
「晋作と何があったかはわからないわ。
私たちが良く知っている、舞ちゃんは【かがまい】と言う女の子よ」
私と同じ名前。
だけど漢字は?
「ねぇ、漢字は?」
「あらっ、舞ちゃんおかしなことを聞くのね。
舞ちゃんは、嘉賀 舞だったでしょ」
雅姉さまのその一言で、私は昔の舞ちゃんと私の存在が歪んでしまっていることを理解せざるをえなかった。
その歪みに晋兄は気づいてた?
そう思うと、体が震えだしてしまう。
私は何者?
私がこの世界に来たから、あの夢で見た……嘉賀舞ちゃんの存在は消えてしまったの?
私がここに来なければ、嘉賀舞ちゃんは今頃、どんな歴史を歩いていたの?
あの夢に見る、あの時間を歩いていたの?
私はどうしていいのか不安になって、だけどこの場所には居場所がないのだとはっきり突き付けられた気がして、
ふらふらの体を支え起こして、立ち上がると部屋の外へと必死に歩き出そうと壁を伝いながら動き出す。



