「いやぁー、舞をたすけて。

 戦争なんて大嫌い。
 舞の大切な人をこれ以上、奪わないで」



空に向かって大声で叫ぶ小さな少女が一人。

ヒューっと何かが音を立てて空から降り注いでる。

不気味なほどに真っ赤に染まった世界で、
何かに怯えながら逃げまどっていた女の子は突然の落雷に撃たれてゆっくりと消えた。


「おいっ、お前大丈夫か?」
「晋作、どうした?」



二人の少年が……誰かを見つけて心配そうに近づいてる。

そこには……舞と布に名前を書かれた、
薄汚れたブラウスに、もんぺ姿のまだ小さな女の子が倒れていた。


そんな女の子を連れて帰って晋兄たちは大人たちに相談して、
その女の子を幼馴染のようにして遊んでくれた。










えっ……。
何、この夢?



その女の子は私の中にある昔に記憶に似て……。




「舞、目覚めたか?」

「舞ちゃん?」

「舞さん?」



零れ落ちた涙の感触を感じながらそっと目を閉じると、
晋兄と雅姉さま、おうのさんが布団の中で眠る私を囲むように座ってた。


「あれっ?私……」


「舞ちゃん、私びっくりしたのよ。
 お二人に、おむすびを作って持っていったら、海辺で突然舞ちゃん倒れてしまって。

 おでこに触れたら、物凄く高い熱が出てるし。
 晋さまがね、ここまで運んでくれたのよ。

 晋さま、本当に心配してたのよ」



まだ現状が理解できない私に、おうのさんが心配そうに覗き込みながら教えてくれた。


「舞ちゃん」

逆サイドからは、雅姉さまの手が伸びてきて私の額に触れる。


「少しは熱下がったみたいね。
 何か食べれそう?」

「私が作ってきますわ」


雅姉さまの声に、おうのさんが反応するように部屋を出て行った。


「晋作、少し席をはずしてもらっていいかしら?
 舞の体を拭かないと。

 汗で気持ち悪いでしょ」

そんな姉様の声に、晋兄は無言で部屋の外へと出て行った。


「ほらっ、舞。
 こちらに着替えましょ」

そう言って新しく用意された寝巻を見せられる。

紐をほどいて着物を脱ぐと、
ぬらした手ぬぐいで、雅姉さまが体をゆっくりと拭いてくれた。


「はいっ。
 さっ、寝巻を着付けなさい。

 これでいいわね」


そう言うと、雅姉さまはまっすぐに私を見つめた。