「舞、お前は誰だ?」


空を見上げながら、懐かしい二人に思いを馳せている途中に、突然、聴覚にとどまった晋兄の声。


お前は誰だって?って
何、いきなり。


突然の言葉に、驚いて寝転がっていた砂浜から慌てて飛び起きて晋兄を見つめる。


「何?
 舞だよ。

 ほらっ、さっきも晋兄は私のこと舞って呼んでくれたじゃない?

 晋兄こそ、なんでいきなりそんなこと言うの?」



私が舞じゃない?

ううん、私は舞だよ。
加賀舞。


加賀舞……だけど、どうしてだろう。
ズキンっと頭が痛くなる。


「あぁ~。お前は確かに舞だ。
 舞だけど、お前は俺が知っている泣き虫舞じゃない」


えっ?
何?
私は晋兄が知ってる舞じゃないの?


何?
突然、晋兄は何言いだすのよ。


私は舞……。

加賀舞。現代から、ここ幕末に花桜と瑠花と一緒に飛ばされて記憶を失った。
記憶喪失のまま晋兄たちと出会って京で記憶が戻った。



私の記憶の中には昔、晋兄や義助たちと一緒に暮らしてた時間がある。

義助を追いかけて萩から京に向かって、
私は新選組の斎藤さんに助けられて出会った。


その後は……斎藤さんと一緒に歩んでた。
そう……あれ、何度も夢に見たあの赤ちゃんは誰?




ズキンズキンと波打つように頭痛は酷くなって、
私は空の眩しさに、着物の袖で目を覆い隠す。



どうして?
何?



そのまま私は何かに吸い込まれていくように意識を手放した。