「そっかぁー。
隊士たちの不満も募っていくよね。
朝、話をしてた御陵衛士なんだけど……花桜が覚えてるのは?」
「えっ、伊東甲子太郎が藤堂さんを連れて新選組を離脱して、
斎藤さんがスパイで潜り込むじゃなかった?
今日、斎藤さんに朝餉を持って行ったときに、チラっとそんなこと聞いたよ。
斎藤さんも出ていくみたいなこと。
あっ、後は……舞の情報とか」
「えっ?舞の?」
「そうそう、毎晩色街に通っては長州の情報に詳しい人から、
舞が戦女神って呼ばれて戦ってるって教えられたって」
舞が戦女神?
花桜の言葉に驚く私と何故か、
あんなにも早くこの世界で独り立ちを決意して旅立った舞だったら……。
そんな風に感じる私もいた。
「そうだよね。
やっぱり舞の戦女神って想像できないよね。
だけど元気だってわかって嬉しいよね」
「私たちも負けられないね。
ちゃんと頑張らなきゃ。
私たちが新選組の為に何ができるのかな?」
「なら花桜に質問。
新選組を離脱する伊東さんは、どんな思想を持ってる人だった?」
花桜は今、凄く真剣にこの時間と向き合おうとしているのが伝わってる。
だからこそ、精いっぱい私も、私が持って知識を総動員して花桜を誘導してあげたい。
「確か……尊王攘夷」
尊王攘夷。正解。
天皇を崇拝し神国日本を守るために外国人を殺害する。
テロも辞さない、過激で、原理主義的な尊王攘夷。
新選組は尊王攘夷を旗印に結成された集団であり、
そんな集団と信じたからこそ、藤堂平助の誘いに応じて伊東甲子太郎は新選組に入隊した。
だけど今の新選組は、幕府よりになってるのは明らか。
花桜が感じてるもやもやは、その矛盾のはず……。
「ねぇ、瑠花。
最近の近藤さんは、幕府を立ててる気がするよね」
「そう。
幕府の為に働いてたからかな。
今の新選組は佐幕派。
近藤さんは、幕府を補佐する立場になってる。
だから溝が深まってくの。
この頃の幕府は開国に向けて動き出してるもの。
開国に向けて動き出してる、幕府を補佐する新選組が、
外国人を殺すなんてご法度でしょ」
「もう……どうにもならないのかな?」
花桜の呟きに、私はただ花桜を体を抱きしめるしか出来なかった。



