「平助、どうしても行くのかい?」
「あぁ。
伊東さんは昔からの馴染みだからな。
なぁ、今の新選組は変わっちまったな。
尊王攘夷。
尊王攘夷をかかげていたからこそ、オレは伊東さんを連れてきたんだ。
けど……変わっちまった」
そう藤堂さんは声を震わせながら告げた。
「なら止められないね。
平助に平助の信ずる道があるみたいに、
僕もどんな形になっても近藤さんと土方さんを裏切るなんて出来ないんだ。
敵同士にならないことを祈るよ」
「あぁ、オレも総司と外でやりあうなんて嫌だからな」
「僕も遠慮するよ」
「じゃ、数日のうちに出てくよ。
早く養生して元気になれよ」
そう言って藤堂さんは、総司の部屋を静かに出ていく。
「あっ、岩倉も来てたんだね。
聞かれちゃったかな」
「……すいません」
「まっ、そう言うことだから。
オレが居なくなった後、総司のこと頼むな。
アイツ、辛いことがあっても抱え込んじまうからさ。
けどな岩倉と親しくなって、作り笑いじゃない笑顔を見るようになったんだ。
だから頼むな」
私にそんな言葉を残して藤堂さんは通ざかっていた。
総司の部屋に入ると唇をかみしめるように、
自分の愛刀を見つめてた。
「総司、朝ご飯持ってきたよ」
諭すように伝えて朝餉の膳を傍におく。
「どこで道は変わってしまったんでしょうね」
総司は小さく呟くと食事をとろうともせずに、
もう一度布団の中へと入り、体を横たえた。
そんな総司の傍で、私はずっと座り続けてた。
その夜、就寝準備をしている私に花桜はその日、花桜が感じたことを話してくれた。
療養中の総司の傍に居た私と違って、今日も隊士たちに交じって動き回ってた花桜が感じたのは、
隊士たちの口から零れだしている日々の不満。
大砲訓練が禁止のなったのも、しし鍋が禁止になったのも、
この場所が『西本願寺』って言う場所的現実を考えたら禁止になるのもわかるような気はするけど、
ただあれもダメ、これもダメっと闇雲に禁止事項ばかり増やしていっても、人の心は納得しないよ。
そんなことがわからない、近藤さんではなかったはずなのに。