「あぁ、練習のし過ぎで手が痺れてしまいました。
息も上がりかけてしますし、僕はこれで。
誰か土方さんの相手してくださいね」
そう言って道場を冷静な足取りで出ようとした総司を
追う様に土方さんは木刀を片づけて向かった。
そんな二人の後を私も追いかける。
「総司、お前……」
土方さんの言葉に、総司は自身の心の不安材料になっていた言葉を吐き出した。
『真剣が少し重たくなってるんですよ』
総司は土方さんに告げると、
そのままその場に崩れるように座り込んだ。
「総司?」
慌てて二人の傍に駆け寄る。
「話は後だ。
総司、熱が出てるじゃないか?」
そう言うと何も言わずに土方さんは総司を抱き上げて自分の部屋へと運んでいく。
私も熱を下げるために必要であろう濡らした手ぬぐいを準備して、
慌てて土方さんの部屋へと駆け込んだ。
「土方さん……ばれちゃいましたね。
僕はこんなところでやめられない」
そう言いながら、土方さんの胸ぐらを掴んで絞り出すように声を出す総司。
「あぁ、お前はまだこれからだよ。
無茶しやがって。
ゆっくり休め。これからも新選組は忙しくなるぞ」
そんな土方さんの声を聴きながら、総司はゆっくりと目を閉じた。
その日から総司はたびたび自室で伏せることが多くなり、
朝餉も自室に膳を運んでとるようになった。
「総司、朝ご飯持ってきたよ」
その日も、私はいつものように二人分の膳を用意して、
総司の部屋へと向かった。
総司の部屋には先客がいてそこには藤堂さんが深刻な顔をして、
向かい合っていた。