「永倉さんも同じなんですか?」

「あぁ。
 他に聞きたいことは?」

「さっき、原田さんが藤堂さんはもう一緒に食事をしないっていう風なことを言ってたんです」

「平助は伊東さんと一緒に新選組を出ていく。
 今頃、その話を局長と詰めているだろう。

 平助以外にも数日のうちに数人離党することが決まっている」


そう話をすると、斎藤さんはお膳の食事をすべて食べ終えて静かに手を合わせた。


「斎藤さんは?」

「俺もここを離れることになるだろう」


そう言った斎藤さんは、そのまま黙り込んでしまった。


「斎藤さんが居なくなったら、戻ってきた舞が……心配します」

「加賀か……。
 あいつも長州で元気にしているみたいだな。

 なんでも戦女神とか言われているらしいぞ」


舞が戦女神?


斎藤さんの言葉に思わず斎藤さんを凝視する。


「島原や祇園に行けば情報は得られる」


そう言って斎藤さんは告げた。


「戦女神って言うのが舞とは繋がらないけど、
 だけど元気だってことがわかって嬉しかったです。

 長居してしまってすいません。
 膳を下げて退室しますね」


そう言って、ゆっくりと立ち上がると斎藤さんが食べ終えた膳を手に、
私は謹慎中の部屋を退室した。



大広間に戻る道すがら、練兵所となっている大広場に設置された
会津の方から貰ったらしい二つの大砲が西本願寺の境内に空砲でドカンっと轟く音を耳にする。


僧侶たちの読経のなか、何度も何度も繰り返し鳴り響く轟き。
時折、屋根瓦が振動で崩れたなんてことも耳にしてる。


西本願寺側の人たちとも時折みられるトラブルが目につきながらも、
私たちの生活はこの場所で変わることなく続いていた。


私が大広間に戻った時には、すでに隊士たちは朝餉を終えていて、
慌てて台所へと急いだ。



「井上さん、すいませんでした」

「山波君、後片付けは私が出来ますよ。
 君も食事を済ませてしまいなさい」


そう言って、手にしていた斎藤さんの膳を受け取ると変わりに支度をしてくれていた
私の膳を手渡してくれた。


「瑠花は?」

「うーん、岩倉君は総司のところじゃないかな?」

「わかりました。
 じゃ、私も頂きますね」



受け取った膳を手にして自室へと戻ると手早く食事を終えて台所へと戻った。



「ごちそうさまでした」


まだ片づけを続けてくれていた井上さんにお礼を告げると、
「さぁ、後は山波君に任せて私は、近藤さんと土方さんの部屋の膳を下げてくるとしよう」
そう言って、静かに台所を出て行った。



井上さんの後を受け継いで洗い物と食器拭きを終えると、
最後の膳が流しへと届く。

その器を丁寧に洗い終わると、私は自室へと戻って愛刀を手に練兵所の方へと姿を見せた。