【瑠宇side】




ピリリリリッ








静寂の中着信音が鳴り響く。








誰だよ、こんな時に電話して来るなんてさ。











まぁ、わかってるけど。












僕の幸せな時間はいつも長くない。

























雫音は、僕が口を開く前に













「いいよ、あたしのことは。









部屋、出てくね。








電話にでて?大切な電話なんでしょ?」












分かり切ったような顔されると、













僕なんにも言えないじゃん。












雫音は小走りに部屋に出ていった。













雫音が、部屋を出て行ったのを確認して、スマホに目を落とす。















液晶画面に表示されている名前を見て辟易する。














「…もしもし。母さん?」














『何してたの?遅いじゃない。








いつも言ってるじゃないの、待たせないでって。









だから、あなたはー…』













「そんな事を話すために、かけて来たんじゃないだろ」













それ以上、聞きたくなくて話を遮ってやった。













『ええ。








明日、帰ってきて欲しいのよ。









ご挨拶に行かなくちゃいけないの。










あなたは、夜神家の長男でしょ?












だから必要なのよ。』














いつもは帰って来て欲しくないくせに、











こーゆー時だけ、帰って来て、なんて都合がいいんだよ。












「…はい、分かりました。






明日、明朝にそちらに伺います。」









心と裏腹に口は嘘をつく。















しかたないことだけど嫌だ。















『忘れないでちょうだい。








じゃ、切るわね。』










一方的にかかってきて切るって…












まぁ、そのほうが僕的にも楽だけど。













母親の顔のために僕は利用される。









僕は、夜神家の道具だ。










そこに、いればいいだけの人形。

















スマホを握りしめる。












パキンっと液晶画面が割れた。

















まるで、僕みたいだな、と自嘲気味に笑った。












壊れたものは、壊れたまま。











また一つ、僕の中の 何かが壊れた。