ガチャリ、とドアの開く音がして反射的にドアの方を見た。









不安げな表情の葵と瑠宇が入ってくるところだった。










体が無意識に力む。












「雫音、ごめんね。」











あたしが口を開く前に、葵が先に口を開いた。










そんなことは、問題じゃない。











「なんで、謝るの?」









想いはあたしの意思を超えて、勝手に喋る。












だって、葵は。












ちがう、葵だけじゃない。













誰も悪くないのに。













あたしが勝手に、気を失っただけ。












葵が神妙な顔つきで、顔を上げる。












「ー…だって。雫音はっ…!」












泣きそうな顔で、葵は悲痛な声を上げた。














瑠宇が妙に冷めた顔をして、あたしを見据えた。















「…雫音は、











もう、気づいてるんでしょ。」














「何のこと…?」











あたしは、知りたくなくて。










嘘をついた。














瑠宇は、静かにあたしの方へ歩く。














櫂李さんと燐さんは、無言で下がる。














あたしと瑠宇の前を遮るものは、もう何もない。














あるのは、頼りないふかふかな布団だけ。














瑠宇はあたしの前まで来ると、あたしを見下ろした。















「…気づいてるんでしょ、ホントは。












俺らがヴァンパイアだって…。」











瑠宇が悲しそうに笑うその口元には。













牙が見えていた。