ゆっくりと目を開ける。









あたしは、違う部屋に運ばれていて、











白いふかふかベットの上にいた。











かすかに頭に鈍い痛みがある。












倒れた時、頭を打ったのかも。











「お目覚めのようですね。」












突然の声にびっくりした。











知らない声で、おそるおそる振り向くと、













銀髪のイケメン執事と桜色の髪をした美人なメイドがいた。












「申し遅れました。








私はこの屋敷に仕えています、執事の櫂李(かいり)と申します。








そしてこちらが、使用人の、」









淡々と櫂李さんは無表情で続ける。









「燐(リン)…。」







燐さんも無表情でボソッと呟いた。









「無礼をお許しください。








燐は喋ることと笑うことが苦手でして。」






櫂李さんは、あらかじめ作っていたような、笑みを浮かべる。










燐さんが、あたしをじっと見つめて










「これから、ヨロシク、









…雫音お嬢様…。」











と聞こえるか聞こえないかくらいの声で言った。












鏡のような燐さんの瞳に映るあたしの顔は、












ポカンと口を開けていて、マヌケな表情をしていた。










これから?










それって…。












その意味を痛いほど知ることになるなんて、













あたしは、まだ知らない。