「お姉さん!」
沙耶はそう言うと突然泣き出した。


(――そうよね。正樹さんを守るために美紀ちゃんの体に憑依したのね。

――だから正樹さんは助かったのね。

――判ったわお姉さん。お義兄さんの傍を離れたくなかったのね。

――だから美紀ちゃんに憑依したのね)

次の瞬間。
沙耶は美紀が愛しくて仕方なくなった。


「美紀ちゃん、今まで辛かったでしょう。私何も出来ないけど、今日から応援団長してあげる」
沙耶は美紀にウィンクした。




 沙耶から語られた真実。

薄々は気付いていたのだろうか?

美紀は意外に冷静だった。


(――もしかしたら?

――私が急に鶏肉が苦手になったのは、ママの影響だったのかな?

――もしそうだとしたのなら?

――叔母さんの言う通りママが私の中に居るって言うことなのかな?)

美紀は自分の胸の谷間に手をかざしてみた。
そして静かに心臓の鼓動に耳を傾けた。


(――ママ、一緒に生きているの?

――だから私はパパが大好きなの?)

でも、本当は美紀は気付いていた。

だったら国体の日に、あんな思いはしなかったはずだと……


(――違う。

――私は自分からパパが好きになったのだ。

――パパを愛したのは自分の意志だ。

――ママの遺志ではないはずだ)

でもそれは沙耶には言えない。
そう思った。